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ジュディハピ!短編 三宮穂高 × 平田加奈子.Ⅰ

ED後の話。
※エンディング後の話が嫌いな方にはお薦めできません。
※エンディング後の話を現段階でも楽しめる方のみお読み下さいませ。


◆提供元:萌えるシチュエーションbot
 第2校舎の図書室、この日は担当の先生が出張で居なく、目の前の本を読んでいる子と二人きり、読み終える気配がなく、閉校の時間、帰る時間だよと伝えるため彼女に近づくと「やっと来てくれた」とそっと呟き優しく抱きついてきた
 
◆設定
 3と加奈子は付き合い始めて一ヶ月程度。告白はセコム(樹里先輩&絵理の妨害)を見事に突破した3から。
 3と付き合っていることはセコムの二人以外に報告していないが、3のデレデレ具合からそれなりに広まり始めている。
 
◆今回のコンセプト
 3と加奈子をケンカさせてみたい! ヘタレな3が見たい! 結局両思い。いいぞもっとイチャつけ。
 
◆注意
 萌えシチュ内容とは少し違った展開になっていますが、想像力が膨らんだキッカケとして『提供元』として紹介させて頂きました。
 傾向としては最初は『3→→→→←加奈子』ぐらいです。3視点でお送りします。
 本編のアレコレを丸っと無視していることが前提なので、単なるイチャイチャ話で3好きの方へのご褒美小説です。
 内容は萌えシチュを書きたいがためのモノなので薄くて短いです。短くても許して下さい。
 
 
*****
 
 やってしまった、と自分の失態に気付いた時には既に加奈子ちゃんがオレを残して去った後だった。
 感情的になっていたので正直自分が何を言ったのか最後の方はよく覚えていない。ただ、驚いたような加奈子ちゃんの顔が苦しげに歪んだことだけは強く記憶に残っている。
 キッカケは単なるオレの我儘だ。やっとの思いで告白をして大好きな加奈子ちゃんと恋人になれたというのに、なかなか恋人らしい事ができない日々に鬱憤が溜まって酷く困らせる質問を口にしてしまった。
 『オレと友達、どっちが大切なの?』なんて二人の関係をこじれさせる定番の言葉は付き合い始めたのに今までと特に変わりない加奈子ちゃんへの意地悪のつもりだった。
 だけどその言葉は口にしたオレ自身を深く傷つけ、オレの焦りを煽った。
 オレだけが加奈子ちゃんを好きじゃないのだろうか、加奈子ちゃんは本当はオレの告白を断りきれなかっただけじゃないのだろうか、と嫌な感情がオレを支配した。
 ああ、そうだ思い出した。オレは加奈子ちゃんが去る前こう言ったんだ。『加奈子ちゃん、オレのことなんて好きじゃないでしょ』という最低な言葉を。
 
 加奈子ちゃんが何も言わずに去ったのは正解だったと思う。
 きっとあの時のオレは加奈子ちゃんがその言葉を否定してくれても素直に納得しなかったはずだ。こうして一人きりになって時間が経つことでやっと冷静さを取り戻せた。
 早く謝らないと……、と力無く呟いた声は昼休みの終了を告げる鐘の音と重なり、何だか妨害されているような気分になった。
 
 そして放課後。オレのクラスも加奈子ちゃんのクラスも午後の授業は全て移動教室だったので互いの顔を合わせる機会に恵まれなかった。
 だけど少しだけホッとしてしまったのも事実だ。例え顔を合わせたとしてもどうやって謝れば良いのかが分らなかった。いつもの軽い調子で謝るのは場違いだ。かと言って深刻そうに切り出せば悪い方向へ転がってしまうのでは
ないかと警戒してしまう。
 そんなことを思いながら、現在進行形でオレは校舎内をウロウロと歩き回っていた。加奈子ちゃんが行きそうな場所を回っているのに全く出会えず時間だけが無駄に過ぎていく。
 携帯に連絡を入れようにも、昼間の事を加奈子ちゃんが怒って着信拒否にしていたらと考えただけで悲しくなったので使えずにいた。
 それに、電話だけで済ませて良い件ではない。オレが加奈子ちゃんに直接自分の足で会いにいくことが重要だと思った。
 
 ――だが、肝心の加奈子ちゃんが見つからない。
 帰宅してしまった可能性があるので一度昇降口まで足を運んだが下駄箱に靴が残ったままだったので未だ学園内に居るはずだ。
 会えないのは単にオレの探し方が足りないのか、誰かの妨害が入っているのか、加奈子ちゃんが避けているのか。原因はどれにせよこの手の問題は時間が経てば経つほどこじれる傾向にあるので、早く加奈子ちゃんを見つけて心
から謝罪をしたかった。
 もういっそのこと電話をして居場所を聞いてしまおうかとも一瞬考えたけれど、その行動にオレ自身が誠意を欠いていると感じたので再び却下した。
 明らかに急ぎ足になって無駄に広い学園を徘徊しながら、何でこんなに広いんだと舌打ちしたい気持ちになった。
 
 それから暫くして、もう一度加奈子ちゃんが帰宅していないか確認するために再度昇降口へ足を運ぼうとしていた時、見知った女の子を発見した。加奈子ちゃんの友達の絵理ちゃんだ。
 視線が合ってしまったので無視するわけにもいかず、いつものヘラリとした笑顔でオレは声をかけた。もしかすると加奈子ちゃんへ繋がるヒントが得られるかもしれないと少し期待しながら。
 

「あー……、絵理ちゃんは今帰り? 一人なの?」
「うん、一人だよ。誰かさんのせいで加奈ちゃんと帰れなくなっちゃったから。あ、私から何か聞きだそうとしても何も教えないって約束してるからダメだよ」
「(バレてる!)だ、誰と? もしかして加奈子ちゃん?」
「ううん、樹里先輩」
「えええええ!? ま、まだ加奈子ちゃんに告白したことを怒って……」
「やだ、私も樹里先輩も過ぎたことに文句を言う人間じゃないよ。そうじゃなくて、今日一方的に加奈ちゃんに不満をぶつけて泣かせたでしょう?」
「……え、え、なっ、泣いてたの!? っ――オレそんなつもりじゃ、」
「ううん、嘘。でも本当。加奈ちゃん泣きそうな顔をして教室に戻って来たんだもん」
 
 ズキン、と胸の奥が痛んだ。
 泣きそうになるのに我慢して泣くまいとするのが加奈子ちゃんの泣き方だ。それを加奈子ちゃんの親友の絵理ちゃんも知っているようで、泣いていないけど泣いていた事を告げる。
 この様子だと何が原因で加奈子ちゃんと仲違いしているのか知っているようだ。加奈子ちゃんは自分からそういった事をベラベラと話す子じゃないはずだから、心配した樹里先輩や絵理ちゃんがうまく誘導し時間をかけて聞きだしたのだと思った。
 小さな身体をより小さくし俯いて話した加奈子ちゃんを想うと、また胸の奥がズキンと音を立てた。
 ぐしゃっとやり切れない思いのまま自分の髪を片手で乱した。
 浮かべていた対人用の気の抜けた笑みは見る影もなく歪んでいるだろう。けど、そんなことより加奈子ちゃんへの後悔で胸がいっぱいだった。
 
 そんな俺を見兼ねたのか、絵理ちゃんが長い長い溜息を一つ吐いて俺にとある質問を口にした。
 その質問は俺を更に戒めるには十分で、同時に俺の弁解を聞きだすようなもの。
「穂高くんさ、すごく大切なものを二つ比べられてどちらかを選べって言われたら悩まずに一つを選べるの?」
「……ごめん。すごく子供だったと思う」
「まったくその通りだよ。加奈ちゃんがその質問に応えられなかった意味、分かってるよね?」
「うん。加奈子ちゃんは大切なものを両天秤にかけるような子じゃないから選べなかった理由も納得できてる」
 
 最初はオレの馬鹿な問い掛けに不快感を示したのだと感じた。でもそれは大きな間違いだ。
 答えられなかったのは本当に困っていたから。何かを犠牲にして得る幸せを嫌う加奈子ちゃんならそんな質問に困惑することをオレは知っていたはずなのに。
 『どちらも大切だよ』『大切すぎて選べない』という言葉を口にする道を塞いだのはオレだ。自分で言った言葉に動揺して答えを急かし、加奈子ちゃんの不安を煽った。
 本当に馬鹿で情けない。一番大切にしている子の一番に自分もなりたいと強く願っているくせに、馬鹿げた嫉妬と勝手な勘違いで加奈子ちゃんを傷つけた。
 
 伏せていた顔を上げ、早く謝りに行かないとと意気込んでその場を離れようとしたオレを絵理ちゃんが呼び止める。
 何、と視線で語ると絵理ちゃんは深い溜息を吐いてオレが求めていた情報を口にしてくれた。
 
「本当はダメなんだけど、今の穂高くんを見れば樹里先輩もチャンスを与えてくれると思うから教えてあげる。加奈ちゃんなら図書室で穂高くんを待ってるよ」
「っ……ありがとう!」
 
 短い感謝の言葉だけ言って、オレはその場から勢いよく走りだした。
 そこはオレがよく足を運ぶ場所だから避けられているはずだと思い込んで一番最初に候補から外していた場所。まさかそんな所に居てくれているとは思っていなかったので驚いた。そして、何故か少し嬉しくなった。
 だってそこは俺が学園内で一番好きな場所だと加奈子ちゃんに話した場所だ。そこでオレを待っていてくれるということは――……。
 
 
 
 図書室の扉の前で上がった息を整え、ゆっくりと扉を開けて中に入った。
 真っ赤な夕日が差し込む図書室の中は無人のようで、オレが歩く足音だけが静かな室内に響く。
 
 もしかしてまたすれ違いかもしれない、と嫌な予感を胸に室内を歩いていると『パタン』と本が閉じられる音がオレの耳に入った。
 図書室の最奥にある、一番人の目につかない席にオレの……オレの大切な恋人は居た。オレの一番好きな場所で一番好きな子がオレを待っていてくれたという状況に、不謹慎かもしれないけど酷く感動してしまった。
 
「……やっと来てくれたんだ」
 
 席から立ち上がって、一歩だけオレに近づいて絞り出すように告げた加奈子ちゃんの声は震えていた。
 そんな加奈子ちゃんを怯えさせないために、ゆっくりと時間をかけて歩み寄ったオレは恐る恐る加奈子ちゃんに手を伸ばしてその身体を自分の腕で抱きしめた。
 優しく抱きしめたことが良かったのか、加奈子ちゃんは一瞬強張らせた身体からすぐに力を抜いて擦り寄ってきてくれた。
 それが本当に嬉しくて少し腕に力を入れると今度は加奈子ちゃんの手がきゅっとオレの服を掴んだ。その可愛らしい行動に先ほどとは別の意味で胸が苦しくなる。
 
「遅くなってごめんね加奈子ちゃん。一生懸命探したんだけど、こんな時間になっちゃった」
「……穂高くんはどこを探し回ってくれたの?」
「どこって、普段加奈子ちゃんがよく居る場所だよ。普通に生活する場所もそうだけど、好きな場所とかも」
「じゃあ、どうして私がここに居るか分かるでしょう?」
 
 オレの胸元に顔を埋めているので加奈子ちゃんの表情を見ることはできない。
 抱きしめたままなのも良いが加奈子ちゃんの綺麗な眼を見て話をしたいとも思ったのだけど、無理強いはできないのでオレは今の体勢のまま質問への回答を考えた。
 
 加奈子ちゃんがここに居る理由。
 それは絵理ちゃんから加奈子ちゃんの居場所を聞いた時にオレが抱いた期待と繋がる。
 自意識過剰かもしれないけれど、その言葉を口にしてあわよくば頷いてほしくて更に期待を込めて口を開いた。
 
「オレの好きな場所だからとか? ってそんなわけない――、え?」
「……ばか」
 
 ぎゅっ、と背中に回された加奈子ちゃんの手に心臓が情けないくらい大きく跳ねた。
 寄り添っている加奈子ちゃんにオレの心臓の音は丸聞こえだと思う。それはすごく格好悪いことかもしれないけど、離れようとは思わなかった。だってオレの位置から見える加奈子ちゃんの耳が真っ赤に染まっているのがよく確
認できたから。
 その可愛い耳に届くぐらいの声量で、加奈子ちゃんの口から答えを聞きたいことを質問する。
 ピクンと跳ねた身体を恐がらせないよう背中を撫でたことで落ち着かせ、ふわふわとした幸せな空気を肌身で感じた。
 

「オレのこと、好き?」
「……きらい」
「ごめんね。でもオレは好きだよ」
「っ――……わ、私もごめんね」
「何が?」
「今の、ウソ。私も、大好き……」
「~~~~っ、加奈子ちゃん!」
 
 何この子可愛いすぎる! と我慢できなくなったオレがぎゅうぎゅうと加奈子ちゃんを抱きしめてしまっても、苦しいはずの加奈子ちゃんは文句を言わずオレの好きにさせてくれた。
 ケンカというより、オレが一方的に不満をぶつけて加奈子ちゃんを困らせてしまうという恥ずかしい事件だったけど、オレは前以上に加奈子ちゃんが好きでこの先加奈子ちゃん以外に目移りしない自分を改めて自覚した。
 加奈子ちゃんは恥ずかしがり屋で、なかなかそういった事を言葉にしてくれないけれど今この瞬間に耳にした一言だけでオレは頑張れる。
 
 そうやって、オレが満足できるまで加奈子ちゃんを離さず下校時刻を知らせる鐘が学園内に鳴り響いた頃、オレ達はやっと互いの身体を離すことができた。
 だけど――。
 
「好き、大好きだよ、穂高くんが。だけどどうすればそれを上手に伝えられるのか分からない」
「か、加奈子ちゃん?」
「だから――……ね?」
 
 精一杯のつま先立ちと、伸ばした手でオレのネクタイを少し強引に引っ張ってオレの顔を引きよせた加奈子ちゃんが触れたのは――唇。
 ちゅ、と軽い音が一度しただけの短いものだったけど、それは間違いなくオレ達の初めてのキス。
 
 あまりに突然のことに呆然としてしまったオレを放置して、真っ赤になった加奈子ちゃんが走り去ったのに気づくのは数十秒後のこと。
 そして、全速力で加奈子ちゃんを追い掛けて二度目のキスを夕日色に染まる学園の廊下で交わすまであと少し――。
 
 大好きだよ、加奈子ちゃん。
 その言葉に返事はなかなかしてくれないけれど、恥ずかしそうに俯いて擦り寄るキミが誰よりも愛しいと感じる事実だけで、オレの胸は幸せでいっぱいだった。
 
 
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