ジュディハピ! プロローグ
プロローグ
それは現代と呼ばれる世界より遥か昔の話――。
神や天の使者が世界の中心だった時代に、多くの者に愛されたいと願った美しい女神が居た。
女神の名は『ジュディ』。
美しい容姿と優しい心で万人に惜しみなく愛を与える役目を持つ愛の女神。
ジュディは愛の女神の名の通り、愛を与えるべき人々を慈しみながら日々を過ごしていた。
ある者が涙すればジュディは慈しみの言葉をかけ、ある者が嘆けば己での愛でその者の全てを包んだ。
そんな風に美しく優しい愛の女神を人々だけでなく、天界の神々も誇りに思い真の愛の女神だと信じていた。
――だがある時、ジュディは美しい自分に向けられる恋慕という名の愛に気付いた。
愛を与えるという職務を繰り返す内に、最初は与えられた愛に喜んでいた者が何か別の感情をもって自分を見ていることに、ふと気付いたのだ。
ジュディの容姿と心に虜になった者は多く、ジュディは次第に己が他の誰よりも美しいのだと日々思うようになった。
ジュディが微笑めば相手の頬に朱が差し、ジュディが囁けば相手の心を高鳴らせた。
それを確信したジュディは、どんな愛をどんな者に送ればよいかを考えていた思考を消し去り、どんな仕草をすれば好意を持たれるのか、どんな言葉をかければ相手の心に響くのかを考えるようにな
った。
与えていたはずの愛が恋慕という最高の形で還されていることにジュディは狂喜し、愛す立場から愛される立場に在ると思い立った。
そしてジュディはいつしか、それを利用して虜にした眉目秀麗な者だけを侍らせ甘美な空間で暮らし始めた。
万人に注ぐ愛をその者達だけに与え、万人に向けるべき愛を惜しんで神の職務を怠けた。
そうやってジュディの世界は望むままに美しく輝き、望むままの時を刻んだ。
そんな風に愛する世界で美しい者達に囲まれたジュディは、その世界を閉じ込めて『永遠の箱庭』を作ろうという考えに行き着いた。
愛する世界に愛する者達を閉じ込め己を永遠に愛すだけの小さいけれど大きな欲に溺れ切った、ジュディにとっては愛に溢れた美しい世界を。他者にとっては欲に溺れた醜い世界を。
しかし、やはりジュディの行動は多くの神と天の使者の怒りを買った。
神々は欲に溺れたジュディから虜にした美しい者達を解放し、神の資格を剥奪した。
だがそれに納得できなかったジュディは己への愛を還せと憤怒し、女神だった頃の面影を消し去って醜く傲慢な姿を天界に晒した。
神々はそんなジュディを哀れに思い、涙した。
その容姿に見合った清く美しい心で愛を囁き、惜しみなく注ぐ女神の姿が何処にもないことに失望した。
困り果てた神々は、何重もの鍵をかけた小箱にジュディと醜い欲を封じることを選択した。
――赦さない…! 私の愛する世界を消してしまうなんて、絶対に赦さない!!
小箱に封じられる最後の最後で放ったジュディの言葉は、蓋を閉じる神々には聞こえなかった。
光ある世界から真っ暗な小箱の底に封じられる寸前に絞り出すようにかけたジュディの魔法を、堕ちた愛の女神に顔を背けた神々は気付くことができなかった。
そして時は流れ、退屈な日常に刺激を求めた一人の少女が、偶然にも女神の小箱を手に入れたことで愛と欲にまみれた物語が始まりを告げる――。
神や天の使者が世界の中心だった時代に、多くの者に愛されたいと願った美しい女神が居た。
女神の名は『ジュディ』。
美しい容姿と優しい心で万人に惜しみなく愛を与える役目を持つ愛の女神。
ジュディは愛の女神の名の通り、愛を与えるべき人々を慈しみながら日々を過ごしていた。
ある者が涙すればジュディは慈しみの言葉をかけ、ある者が嘆けば己での愛でその者の全てを包んだ。
そんな風に美しく優しい愛の女神を人々だけでなく、天界の神々も誇りに思い真の愛の女神だと信じていた。
――だがある時、ジュディは美しい自分に向けられる恋慕という名の愛に気付いた。
愛を与えるという職務を繰り返す内に、最初は与えられた愛に喜んでいた者が何か別の感情をもって自分を見ていることに、ふと気付いたのだ。
ジュディの容姿と心に虜になった者は多く、ジュディは次第に己が他の誰よりも美しいのだと日々思うようになった。
ジュディが微笑めば相手の頬に朱が差し、ジュディが囁けば相手の心を高鳴らせた。
それを確信したジュディは、どんな愛をどんな者に送ればよいかを考えていた思考を消し去り、どんな仕草をすれば好意を持たれるのか、どんな言葉をかければ相手の心に響くのかを考えるようにな
った。
与えていたはずの愛が恋慕という最高の形で還されていることにジュディは狂喜し、愛す立場から愛される立場に在ると思い立った。
そしてジュディはいつしか、それを利用して虜にした眉目秀麗な者だけを侍らせ甘美な空間で暮らし始めた。
万人に注ぐ愛をその者達だけに与え、万人に向けるべき愛を惜しんで神の職務を怠けた。
そうやってジュディの世界は望むままに美しく輝き、望むままの時を刻んだ。
そんな風に愛する世界で美しい者達に囲まれたジュディは、その世界を閉じ込めて『永遠の箱庭』を作ろうという考えに行き着いた。
愛する世界に愛する者達を閉じ込め己を永遠に愛すだけの小さいけれど大きな欲に溺れ切った、ジュディにとっては愛に溢れた美しい世界を。他者にとっては欲に溺れた醜い世界を。
しかし、やはりジュディの行動は多くの神と天の使者の怒りを買った。
神々は欲に溺れたジュディから虜にした美しい者達を解放し、神の資格を剥奪した。
だがそれに納得できなかったジュディは己への愛を還せと憤怒し、女神だった頃の面影を消し去って醜く傲慢な姿を天界に晒した。
神々はそんなジュディを哀れに思い、涙した。
その容姿に見合った清く美しい心で愛を囁き、惜しみなく注ぐ女神の姿が何処にもないことに失望した。
困り果てた神々は、何重もの鍵をかけた小箱にジュディと醜い欲を封じることを選択した。
――赦さない…! 私の愛する世界を消してしまうなんて、絶対に赦さない!!
小箱に封じられる最後の最後で放ったジュディの言葉は、蓋を閉じる神々には聞こえなかった。
光ある世界から真っ暗な小箱の底に封じられる寸前に絞り出すようにかけたジュディの魔法を、堕ちた愛の女神に顔を背けた神々は気付くことができなかった。
そして時は流れ、退屈な日常に刺激を求めた一人の少女が、偶然にも女神の小箱を手に入れたことで愛と欲にまみれた物語が始まりを告げる――。
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