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ジュディハピ!短編 パロディ小説:赤ずきん(前編)

パロディ小説です。
苦手な方はご遠慮下さい。




◆提供元:Twitterでパラレルネタで盛り上がっていた際に、『童話も良いよね!』的な会話になったことにより妄想が抑えきれなくなって誕生。
 
◆役の位置付け
 赤ずきん:加奈子
 赤ずきんの同居人:樹里先輩(薬師?)、絵理(パン屋の看板娘・猟師?)
 狼共:1、2、3、4、6
 樹里先輩の取引先で謎の医者:保
 近所の悪ガキ:5
 町の自警団:7、8、9、10
 
◆注意
 童話『赤ずきん』のパロディ(?)小説です。が、童話と言いながらも内容はかなり違ったものとなっています。
 導入部分である今回の『前編』と狼達と加奈子の好感度が低い場合の『中編』、好感度が高くなった場合の『後編』の三部作にする予定です。
 一部のキャラが贔屓になっていたり、逆に酷い扱いを受けていたりしますが悪意はありませんのでご了承下さいませ。
 
+++++

◎共通プロローグ
 
 とある町から少し森寄りに離れた小さな一軒家に年頃の娘が三人住んでいました。
 一人の名前は樹里。風邪薬や傷薬から口で言うのも恐ろしくなってしまうようなエグイ薬も手がける腕利きの薬師です。たぶん薬師です。
 次の一人の名前は絵理。普段は町のパン屋で働いていますが実は凄腕の猟師で仕事と同居人と楽しく過ごしている以外の時間は銃の手入れをしている事が多い、ちょっぴり夢見がちな女の子です。
 そして最後の一人の名前は加奈子。『可愛いでしょう?』と敬愛する樹里が買ってきた猫耳のような飾りのついた赤いフード付きポンチョをよく着ているので周りからは『赤ずきんちゃん』と呼ばれています。呼ばれるように誰かが仕組みました。誰かはあえて言いません。
 そんな三人は自他共に認める仲良しさんです。
 
 働いている二人とは違い加奈子は樹里の手伝いや家事全般を担っていました。本当は加奈子も働きたいのですがそうしていないことには理由があります。
 加奈子も昔は町で色々な仕事をしていました。でも職場に慣れて良好な人間関係が築かれそうだと思った途端解雇されてしまうのです。同じ職場の女性陣は理由を追及しようと動いてくれた人もいましたが、何故か男性陣は揃って真っ青な顔で首を横に振ります。中には『魔女が……』と漏らす人も居ましたが周りに口を塞がれてそれ以上は何も言えなくなってしまいました。
 とにかく、そんな事が何度か続いてしまったので加奈子も最初こそは落ち込みましたが樹里と絵理の励ましにより元気になり、今の形で落ち着いたのです。
 しかし、それでも納得しなかったのは加奈子が最後に働いていた菓子店の息子の双子達です。
 何かと加奈子をからかって遊んでいた二人は直接本人に言えませんがかなり加奈子を気に入っていました。だから加奈子を解雇した父親に再雇用をお願いしましたがダメでした。
 何とか関わりを持とうと思った双子ですが作戦は上手くいかずイライラです。そんなある日、偶然用事で町に来ていた加奈子に遭遇し嬉しいはずなのに不満をぶつけてしまいました。
 
 『仕事を途中で辞めるなんて無責任だ』『そんな人は何をやっても中途半端でダメだ』という言葉は加奈子の心を深く傷つけました。本当は双子達も『だから職場に復帰しなよ』という言葉を最後に言いたかったのですが、肝心な所で素直になれない性格が災いして意地悪がヒートアップしていくだけです。
 泣きそうになった加奈子に気付いた時には既に手遅れでした。やはり素直になれない双子は謝ることもできず、その場に通り掛かった自警団の介入により加奈子を傷つけたまま別れることとなりました。
 気になる子を傷つけてしまったというバカでどうしようもない双子ですが、実は彼等の件はそれだけでは終わりませんでした。
 
 赤茶色の髪に鋭い眼という、見た目は恐いですが不器用なりに加奈子を励ましてくれた自警団の団員は親切にも加奈子を家まで送り届けてくれました。
 でも双子に傷つけられた心がそれだけで完全に癒されることはなく、やはり少し落ち込んでしまいます。
 それに気付いたのは外出から戻った同居人の樹里と絵理でした。様子のおかしい加奈子に理由を尋ねても、二人に心配をかけたくない加奈子は力無い笑顔で首を横に振るだけです。
 しかし二人は優しく時間をかけて加奈子を気遣い続け、ついにはその優しさに何かが耐え切れなくなった加奈子がポロポロと涙を零しながら自分の不甲斐なさを悔やむ本音を漏らし出しました。
 そんな加奈子を二人は優しく慰めてくれます。仕事のことは解決しませんでしたが、本音を吐き出せたことで加奈子の心は少しスッキリしました。
 『加奈子は花嫁修業中だから仕事は気にしなくて良いわ』という樹里の冗談にも明るく笑うことができたので、自分も何か嫌味を言われたら『花嫁修業中です』と冗談で答えることにしました。
 もちろん、樹里と絵理は冗談で言ったつもりではないのですがそんな二人に加奈子が気付くはずがありません。ついでに言えば、花嫁修業をしている加奈子をどこにもお嫁へやる気は二人には全くありませんでした。こんな矛盾も二人には通常運行です。
 
 そしてその翌日――。
 町の中央にある噴水公園の一番大きな木に、縄でぐるぐる巻きにされた双子が逆さで吊るされているのが発見されたのでした。
 事件の解決に乗り出そうとする自警団の質問に、真っ青な顔をした双子は首を横に振って質問に答えません。その話を聞いた一部の男性陣は顔には出しませんが心の中で妙に納得していました。
 加奈子が務めたことのある職場に勤務する男達も似たような経験があるからです。でもそれが自警団の耳に入ることはありません。何故なら誰もそのことについて語ろうとしないからです。
 こうしてまた、加奈子に関する『何か』に恐怖する男が増えたのでした。
 
 
 
 そんなある日。
 加奈子は樹里の頼みで森の中に住む医者『丘野裕貴』の元へ薬を届けることになりました。
 いつもは樹里が直接足を運ぶのですが、今は薬の調合中で手が離せないので代わりとして加奈子が出向くこととなったのです。お使い自体は初めてではないですが、森に住む医者の所へ一人で行くのは初めてです。いつもは樹里か絵理が一緒なので少し緊張しています。
 
「ごめんなさいね、本当は私が丘野先生に薬を届けるはずだったのに……」
 
 玄関先で薬の入ったバスケットを持った加奈子を送りだす樹里は何だか思案顔です。
 心配してくれているのだと思った加奈子は、少しの不安を隠して樹里にニッコリと笑って手を振ります。
 
「大丈夫です、樹里先輩! 森の中と言ってもそう遠くありませんのですぐに帰ってきますね!」
「そう? でも十分に気を付けなさいね。森には恐い狼が出るらしいから」
「狼ですか? あはは、狼は自分好みの可愛い女の子しか襲わないって噂だから私なら安心です」
「あらあら。本当にそうなら良いのだけど……無理でしょうね」
「え? 樹里先輩、最後に何て仰ったんですか?」
「何でもないわ。――さぁ、そろそろ行ってらっしゃい」
「あっ、そうですね。夕食までには帰りますので、行ってきまーす!」
 
 久々の外出にウキウキとした様子の加奈子を見送って、樹里はポツリと一言漏らしました。
 
「あの子、狼達の好みだから遭遇するに決まっているわ。……ふふ、楽しいことになりそう」
 
 こちらもウキウキした様子で玄関から室内に戻り、調合中だった薬を手早く片付けた樹里は机の上に丸くて大き目の水晶玉を置きました。
 水晶玉に手をかざして、人の耳では聞き慣れない言葉を口にした樹里に反応して透明だった水晶玉が白く濁り出しました。
 そしてその濁りが晴れて再び透明な色に戻ると――、そこに機嫌良さそうな様子で森へ向かう加奈子の姿がハッキリと映し出されていました。
 樹里がプレゼントした赤いポンチョの、猫耳付きフードを被っている加奈子はとても可愛らしいです。
 
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